ふく百話(97)
「山口県ふく連盟」
今回の表題の「山口県ふく連盟」という団体は存在しませんが、私が希望する団体です。山口県にはふくの本場・下関市。ふく延縄漁業発祥の地・周南市。
県内最大のふく漁の基地・萩市。県内最大の観光拠点・山口市。ふく養殖場のある長門市。その他の地域は工業・観光が盛んでふく消費に期待の持てる町です。
加えて「県のさかな・ふく」です。それを束ねる団体が今までなかったのが不思議なくらいです。全国的には「全国ふく連盟」がありますが、この団体は全国ネットで大きいですし、中心は料理屋さんです。
山口県ふく連盟(仮称)ができれば、その中心は下関ふく連盟となるでしょう。ところでその下関市にふくの団体が2つ存在します。「協同組合下関ふく連盟」(郷田理事長)と、「しものせき海響ふく協同組合」(青木理事長)です。
元々は下関ふく連盟の一つでしたが時代の流れと言いますか、時代の変化があったのです。昔からある下関ふく連盟は下関唐戸魚市場(株)と仲卸人組合が中心の団体です。私も在職中は事務局として仕事をしました。昔はふくと言えば、天然物。業者は仲卸人。ミガキ出荷か活魚出荷が主体。刺身は冷凍保存等しないで、生引きを出荷するのが当たり前でした。シーズンは秋の彼岸から春の彼岸まで、4月29日の下関ふく供養祭が終わればふく業界は秋までの長い期間、開店休業状態で次のシーズンに向け営業や視察、施設整備等で数か月過ごしました。それが養殖ふくの出現、価格の安いサバフグなどの大量加工、さらに冷凍技術の進歩やコールドチェーンの発達で冷凍物も多くなりました。最近では消費者から鮮度が安定していて受け取りも容易なことから冷凍状態での受け取り希望も増えています。
私が在職中では仲卸人以外の加工業者やトラフグ以外のフグを扱う業者を会員でもお客様扱いし、一段低く見ていた気がします。
ところが近年の流通革命により魚市場を経由しない、ふくの流通が増えています。さらに二次加工力は仲卸人を凌ぐ勢いです。仲卸人は一次加工、ミガキ処理・出荷が主体の業者が多いのです。
このような状況下で令和3年、加工業者と料理業者が中心となって設立したのが「しものせき海響ふく協同組合」です。この組合には下関唐戸魚市場の仲卸人有志も加入しています。
私は歴史や経過はともかく、本場下関市に二つのふくの組合が存在することは全盛期のように業界の勢いがあるときはともかく、競争相手が県外、国外に拡大している中、下関ふく業界の力を弱めるものだと考えています。
早く大同団結して「下関ふく連盟」として1本化すべきです。
ただし、(新)下関ふく連盟は既存の活動に満足していてはなりません。歴史ある活動に加え、もっと市内を巻き込んだ能動的団体に発展すべきです。
それにはふく業界のみでなく、観光、飲食、宿泊、文化、科学などの部会のある大下関ふく連盟を目指すべきです。
市民向けふく料理教室を数多く開催して唐戸市場における「ミガキふく」の消費拡大を図るべきです。市内の幼小中高大学への出前授業も将来の顧客だと考えれば大切です。昔は行っていたマスコミとの交流も大切で皆でふく刺しを囲めば取材の意欲も高まります。加えて市内にある大学との連携も他都市ではできない取り組みです。市立大学とは「ふくの経済」、水産大学校とは「ふくの科学」、東亜大学、梅光学院とは「ふくの文化」、「ふくと海外」など窓口となる教授を決めて交流を図るべきです。この取り組みは日本一となります。
西日本ふく研究会との連携も大切で全国から集うふく専門家会合の事務局を強化すべきです。会議後の本場でのふく料理も期待されています。会議も懇親会も「ふくの殿堂・ふく楽舎」が最適だと思います。
ふく連盟の組織は現在の協同組合ではなく、業界を盛り上げる会社的なもの、せめて社団法人化に衣替えすべきです。ブランド力に陰りの見える「下関ふく」をもう一度、輝かせる最後のチャンスです。「小異を捨てて大同につく」のは今だと思います。
その熱意が県内のふく業界を動かし、山口県ふく連盟設立のエネルギーとなるでしょう。一連の旗振りは下関唐戸魚市場(株)と仲卸人組合です。
私が水面下で調査したところ、この動きへの各業界の同調者は多いです。
これらの動きが起きるのであれば、及ばずながら私も元下関唐戸魚市場(株)専務、元下関ふく連盟名誉会長、元下関市長として最後の尽力をさせて頂きます。
下関市には鯨肉普及推進協議会、下関くじら食文化を守る会、あんこう協議会とそれぞれのブランド協議会があります。各団体の交流を図りブランド強化も大切なことです。
南風泊市場は現在建て替え中です。令和4年度には高度衛生化対応の新市場に生まれ変わります。新しい下関ふく連盟の誕生を祝福する大きな事業です。
下関唐戸魚市場(株)は創立70周年を経過しています。新しい事業を起こすにはチャンスの時期だと思います。業界の英知を結集して頂きたいです。
今年の3月は「マフグ」のPRに努めました。料理教室、自治会、顧問先、友人、家族・親戚等で100匹以上は使いました。刺身包丁は出雲の刀包丁です。
中尾友昭、まだまだ体、心、腕も包丁も錆びてはいません。業界の要望があればお手伝いします。